『家業・後継者・個人事業主への専門家派遣日記』③ Vol.280

ⅮⅩの前に〝人が動く仕組み〟を整える

◆テーマ:※営業DX初動(人と仕組みの連動編)

□ケース3:部下が役割に気づく瞬間。

展示会は、営業課長主導でスムーズに実施できた。A部長は「先生のおかげです」と言ってくれたが、実際には別の要因が大きい。営業課長は明らかに積極的行動派(フッカースタイル)。動きながら考え、現場で力を発揮するタイプだ。A部長(レシーバースタイル)とは対照的だが、役割を与えれば圧倒的に強い。展示会という動いて成果が見える場が、彼の適性に合っていたため、自然と周囲の年長営業パーソンも巻き込まれた。数日間の開催で名刺交換数はかなりの成果。ただ、比較対象が無いので私が称賛した。もちろんダントツのトップは営業課長だった。当初、A部長が営業課長の言動を否定的に感じていたのは、タイプの違いによる誤解(関係性ギャップ)にすぎない。

・フッカースタイル(探求志向):率直・押しが強い
・レシーバースタイル(安全志向):慎重・内向的
両者の温度差が摩擦を生んでいただけだった。

□A部長の一言:うまくいきました。
「展示会はなんとかうまくいきました。名刺のデータ化もできましたので、明日からメール営業を始める予定です。」

企業背景:典型的な受注産業
・業歴:40年、社員数25名、主要顧客は大手2社(近年売上減少)
・展示会出展目的:新規顧客の獲得
・相談経路:商工会議所の紹介 ・現状課題:個別対応中心、提案営業の仕組みなし

営業課長セールススタイル(以下S.S.と呼ぶ)

フッカースタイル
積極的行動派のスタイル。フック営業が得意。新規の出会いシーンは大いに力を発揮。明るく、アクティヴな雰囲気で人に好かれやすい。人気者になりやすく、世代を問わず可愛がられる傾向。積極性があり、提案は得意だがやや感覚的で、理論武装は苦手。営業活動で率先してことに当たってもらうことに向いている。展示会場の現場でも名刺交換数などは一番多いハズ。但しその後のフォローアップは弱い。クロージングまでの道筋は何らかの仕組みやルールが不可欠で、突破口を作るが、後続は仕組みで補う必要があるタイプ。

◆S.S.から判る事業推進上の強みor弱み

  • (強み)フック力(掴み)、好感度が高い。
  • (弱み)クロージング力(肩押し)、フォロー力(お伺い)。
    最終契約獲得・後追い営業については補強が必須。掴みはOKだが後が続かない恐れがある。

今回の課題解決の手順

  1. A部長は営業課長を補佐役にしたが、結果的に〝前に出る役〟に適任だった
  2. 営業課長が矢面に立つことで年長営業メンバーの反発を回避できた
  3. 営業課長の強み(積極性)を活かし、プロジェクト全体のムードメーカーを任せた
  4. 展示会終了後、営業課長が〝自分の役割〟に気づき、主体性が高まった
  5. 展示会で得た見込み客のフォローを開始
  6. フォローと呼んでいるが、実質は開拓活動そのもの
  7. 営業課長をリーダーに、生え抜きメンバーを巻き込みながら開拓&提案活動を始めた

専門家所感

A部長が行う課題解決の展開

営業課長に役割を与えたことで、本来の積極性が開花し、指示ではなく 行動でリーダーシップを発揮してくれるようになった。そしてA部長自身も、「自分が動くのではなく、タイプに応じて人を動かす仕組みを作ることこそ、後継者の仕事である」という本質を体感的に学ぶことができた。
〈今回の教訓〉
『タイプを理解し、役割で動かす』 ことで組織は加速する。

外部から見たキーストーン(要石)

企業では数字の変動が危機感の源になるが、その危機感の芽生えるタイミングは社長の性格・価値観・成功体験で大きく変わる。今回はタイミングが良く、A部長の改革意識と営業課長の行動力がうまく噛み合った。一方で、準備不足で本番を迎えようとする社長気質も垣間見えたが、それもまた中小企業では珍しくない特徴である。

社内体制のポイント

営業課長が動き出し、Eメールを使ったフォロー営業をスタートすることができた。行動力のある営業課長は他のメンバーも動かし、データベース作りを始め、メール配信の体制作りまで一気に完成する。このことでDX化も同時にスタートできることになるわけだ。動く人が一人現れると、DX化は一気に進む。

RACIモデル(役割整理)

責任者(A):A部長、実行担当(R):営業課長(補佐役)、助言者(C):専門家(外 部)、情報共有(I):商工会議所担当。

【次号予告】― □営業セミナー×専門家相談をフル活用し、〝受け身型〟から『行動型』に変わった個人事業主の物語。