『家業・後継者・個人事業主への専門家派遣日記』⑧ Vol.273

己を知り、営業戦略の第一歩としてステークホルダーを援軍化せよ!

◆テーマ:〝※援軍づくり〟

社長の場合

■業種    製造業

■従業員数  11名
■業務内容  金属加工業

T社長   「はじめまして。この度はよろしくお願いいたします。」

山田英司 「こちらこそ。〇〇商工会議所のX様、この度はありがとうございます。」

Ⅹ氏   「よろしくお願いします。理事に相談しましたら先生のお名前が出たもので。」

山田英司 「思い出してもらえて嬉しいです。理事にはよろしくお伝えください。ところで今回は※民生品開発の件ということで。」

T社長   「はい。実は知り合いの会社が民生品で売上を上げているのを聞き、うちもできないものかと思いまして。
今の取引先は数字が下降気味で。このままではマズイと思っています。」

山田英司 「なるほど。民生品開発に方向性を絞られた理由は何か具体的にありますか?」

T社長   「知り合いの会社が…。あっ、ちゃんとした理由考えていませんでした。」

山田英司 「そうでしたか!?では今日は理由を一緒に考えるのが主題ですね。」

T社長   「他の方向性で何か先生の方でアドバイスがあればお願いします」

Ⅹ氏   「実は、その点が本日の主題なんです。何か他に良い方法がないものか!?が目下の課題かと思っております。」

T社長   「そうなんですか、それなら全然言ってもらえばよかったのに…。」

山田英司 「T社長をたてていらっしゃったんですよ。ご意思を最優先されたのだと思います。」

T社長   「そうでしたか、それは、それは。」

山田英司 「結論から言いますと、方向性は悪くないと思います。でもオリジナル開発はやめた方が良いでしょうね。」

◆現状

T社長は30代。後継者でまだ会長もご健在。
ただT社長に経営の全権をすでに任せられていて、良く言えば度量がある会長という感じ。
悪く言えば経営から逃げ腰?T社長は経験面であいにくまだ不安要素がある様子。
ただ、機転が利いて頭の回転も速く、意見も鋭い。うまい具合に方向性さえ定めることができれば成功しそうな逸材と思われる。
今回は自社の現状を分析し、自社の強みなどを検証する必要がある。
取引量の減少がそもそもの発端であるが、それとて理由を調べる必要があるだろう。
現状、切迫状態というわけでは なさそうなので、一旦は自社を振り返るのが賢明だろう。

問題点

〇○が起こったらまず△△をするなどの基本中の基本というパターンが何事にもあるハズ。
T社長の場合はまずそこからチャレンジするのが良さそう。
本来、この辺りは仕事を引き継ぎながら先代が教えてくれるハズなのだが、あいにくそれがなかったようだ。
誤解のないように敢えて言うがその経営方針が間違っているというわけではなく、後継者が模索しながら会社を築きあげていくのも素晴らしいことだ。
いずれにせよ、T社長には当面はメンター的にアドバイスをしてくれる存在があるといいだろう。
営業課題、人の問題、資金繰りなど一般的な経営課題より、もう少し俯瞰的に事業をみながら人としてのT社長を
みてアドバイスをくれる存在だ。ただ、こればかりはT社長が自分で気づくしかな いのが難点かも。

T社長セールススタイル(以下S.S.と呼ぶ)

レシーバースタイル(当社診断結果)
守備行動派のスタイル。二代目三代目に多い。先代の経営を丁寧に引き継げるスタイルを持っている。
調整力に長けていて、守りの経営には打ってつけ。但し、変化に弱く、改革は苦手。
予測や検証など理論的に分析をするのも苦手かも知れない。今は変化の時代なので、いつ事変が起こるとも限らない。
常日頃から信頼できるアドバイザーを持っておく ことが大切だろう。

◆S.S.から判る事業推進上の強みor弱み

  • (強み)行動力があり、人に好かれる。敵を作ることがなく取り入るのも上手。対応もにこやかで相手を安心させる。
    持続力・忍耐力に長けていて、事業を長く維持する力や新たな客先の紹介を獲得する力もある。
  • (弱み)変化に弱く、提案や開拓という活動も手に余ってしまう恐れが。どちらかというと新しい事案は避けがち。
    客先からの印象は、安心はできるが期待は少ないとい ったところ。業者選定では真っ先に値交渉になってしまう恐れがある。

強みを伸ばし、弱みを補う事業戦略

T社長はフットワークがある。ただ、新たな人脈作りなどには足が向きにくい。
そのため、自身を客観視し「あそこに参加してみては?」「●○なことをやってみては!?」と、
新ネタ収集や小さな挑戦事を提案するサポーターがいると良さそうだ。
先輩経営者や客先にも面倒見の良い人がいたりするので、活用すると良い。
但し、相手の人選には注意が必要。親身にT社長のことを思って提案する人と、単に自分が良いと思っていることを提案
する人とは区分けする必要がある。大抵の人は悪気こそないが後者のパターンが多いか らだ。

専門家所感

T社長ご自身について

製造業としての現場経験はもともと大手で修行されたので抜群のスキルをお持ち。
ただ自社の場合は営業的活動も必要。特に、今後は会長の時代のように得意先の受注が安定するという保証はない。
危機感を持って早いうちから準備をする必要がある。そのためにも他社の模倣ではなく、自社独自の方向性を模索することが大切。
まずは事業の棚卸と強み発掘からかも。

外部活用

外部活用は必須のテーマ。自社について客観的にみてもらえる専門家が良いであろう。
ただネガティヴな人はやめた方が良い。何故ならT社長自身が引きずられてしまうからだ。
どちらかといえば、ブレーキ側のT社長なので引っ張ってくれるような援軍も良さそう。

対策の道筋

得意先だけでも名刺の枚数が半端なく100枚以上ある。担当と呼ばれる人は10人足らずだがそれ以外の人にも情報発信すべきだろう。
強みを探り出し、それを言葉やビジュアル、あるいは事例としてPRのコンテンツに変え、とにかく発信をするのが先決だ。
今後の戦略の方向性を決めるのはその後でも遅くはないだろう。

※民生品
 かなりマイナーだがエンドユーザー向けの製品を指す。業務用ではなく、主に電子機器や装置など金属や機械などの分野に特化して表現されることが多い。