『家業・後継者・個人事業主への専門家派遣日記』④ Vol.269

己を知り、営業戦略の第一歩としてステークホルダーを援軍化せよ!

◆テーマ:〝※提案営業の基本(後編)〟

営業リーダーの場合

■業種    金属加工業

■従業員数  35名
■業務内容  旋盤や精密機械、板金加工

О取締役 「先日の研修ではありがとうございました。次回も宜しくお願い致します。」

山田英司 「承知致しました。次回は4か月後ですね。」

О取締役 「はい。実は今日は別件で相談があり、Pも同席させて頂きました。実は2か月後に展示会がありまして。その対策をご相談したく。彼が責任者です。」

山田英司 「P様、先日はお疲れ様でした。」

Pリーダー「ありがとうございました。診断結果は驚きでした。当社が守備型しかいないというのも納得です。予想以上に発信力が不足しているのを痛感した次第です。私が攻撃型で周囲から浮いた存在になることも納得できました。」

山田英司 「大変恐縮です。製造業は緻密な作業が多く、当然守備型が力を発揮できるのは間違いありません。じっくり粘り強く作業に向き合うことが大切ですから…。」

Pリーダー「ただ、それだと営業的には駄目ってことなんですよね。あと、〝発信〟と『提案』の違いのお話も興味深かったです。」

山田英司 「ありがとうございます。」

О取締役 「そこで展示会ですがディスプレイやパネルなど今まではデザイン会社にお願いしていたのですが、前回の反響が弱かったこともありPとも相談して展示会自体をもう一度企画し直す必要があるのでは!?となりました。」

山田英司 「それはいい。展示会はあくまで営業戦術の一つ。今後を踏まえ、この機会に戦術についてご整理されてはいかがでしょうか!?上手くいけば懸念事項である人材獲得や育成も自ずと片付いて参りますよ。」

О取締役 「‥‥。(そんな上手い具合に人問題も??)」

◆現状

実はPリーダーは後継者候補。以前は大手の製造業にお勤めで昨年同社に戻られた。
社内で最も若く、先輩社員とは20歳近く離れている。
新分野への挑戦も視野に入れられ積極的に改革を進められたいようだが中々社内が動かないことに少々苛立たれている。
そんな中、次回の展示会運営を任された。
この機会を上手く活用して提案営業の体制づくりについても合わせて吟味できれば新たなスタートとなるだろう。

問題点

提案営業は顧客課題に対し自社製品を的確に位置づけ、解決策に盛り込みつつ顧客に成果を提供する活動。
ちなみにこれには相手課題は無視し、課題自体を引き出すためにリスク覚悟で※敢えて的外れ情報を発信することも含んでいる。
当たり前のことだが課題が見つからないと顧客動機も生まれず、動機がないと仕事も生まれないからだ。
ただ同社の場合、受注活動が長きに渡っているため、営業パーソンにおいて※活動の硬直化が進んでいる。
このままだと既存業務に固執しがちになり、視野を広げるのが難しくなる。
既成概念が邪魔して顧客課題に目を向けるどころか気づくことさえできないわけだ。

Pリーダーのセールススタイル(以下S.S.と呼ぶ)

フッカースタイル(当社診断結果)
攻撃行動派の性格をベースとし、その特性の影響を大きく受ける。
人を惹き付ける魅力がその行動や言動から醸し出され、新規出会いのシーンでは持ち前の※フック力が大いに力 を発揮する。
但し、計画的な動きは苦手で、持続力にも問題があるので注意が必要。

◆S.S.から判る事業推進上の強みor弱み

  • (強み)新規開拓活動など対面では大いに力を発揮できる。たくさんの人を惹き付け名刺の獲得枚数はピカ一。好奇心旺盛で新しいことへのチャレンジ精神もある。
  • (弱み)興味が分散しがちで、整理が苦手。腰を据えて一つのことをじっくり取り組むことが苦手である。弱点を共有できるメンターの補強があると心強い。

強みを伸ばし、弱みを補う事業戦略

Pリーダーの周囲には様々な人が集まってくる。O取締役は彼の吸引力を上手く活用し、
ブース来場から商談機会獲得までの流れを体系化することが重要。
Pリーダーには展示会現場で入口に立って頂くのが良いと思われる。
但し、名刺交換が済んだ後はすかさずサポーター役がフォローするのが良い作戦だ。
今回は展示会戦術でのアドバイスだが、この考え方(営業エレメントによる編成)は今後の事業戦略にも活かせるはずだ。

専門家所感

Pリーダーご自身について

好奇心旺盛で、魅力的なPリーダーは人を集める力に長けている。
営業戦略を今後強化していく同社にはまさに必要な人材と言える。
ただ、プラス面ばかりではなく、あきらめが早過ぎることや、あちらこちらに興味が拡散してしまう点は問題である。
弱点を認識し、その 面をPリーダーご自身が十分理解し、補っていく力を付けることが大切だ。

外部活用

強みを伸ばす。弱みを補う。
この2つは営業活動において最も重要なポイントである。
それは一個人としても言えるのだが、社としても同じことが言える。
また強みであっても行き過ぎるとマズい場合があり、こちらは制御も重要。
あくまで相手があっての強みということを考えておかなければならない。
Pリーダーには信頼できるサポーター的役割のパートナーが必要と言える。

対策の道筋

私が言うのも変な話だが、Pリーダーからの信頼を獲得でき、Pリーダーの強み弱みをよく理解し、
おまけに営業指導ができるメンターを用意し、実践で小さな成功体験を積みながら
致命的な失敗をしないように(しかしトライ&エラーはあり)、さりげなく事を進められるとベストであろう。
既存客への提案力アップと新市場発掘において成果を上げるのはもち ろん、
営業活動を通してPリーダーの育成も行うハイブリッド対策が必要であろう。

※敢えて的外れ情報
 実際の戦争で探索射撃という行為がある。敵がどこにいるかわからない場合、弾が減ることやこちらの
位置が相手にわかってしまうことを覚悟してそこかしこに弾を打ち込み敵の所在を確かめるわけだ。
敵が打ち返してきた場所が狙うべきところというわけ。営業パーソンも敢えて外れかも知れない情報を
持参して相手の反応から本来知りたい課題を引き出す場合がある。ただ受注活動のみが続いた営業パーソン
はこの活動ができず、リスクを嫌い100発100中ばかりを求めてしまう。

※活動の硬直化
 先の説明からさらに加えて、受注産業では100発100中で仕事のご依頼を受け、いきなり業務がスタートする。
顧客課題や仕事が生まれる元となる企業側の動機などに関心を示す必要がない。
当然、100発100中活動が習慣化してしまうと、目に見える業務しか興味を示せなくなり、
業務自体を創造するための活動には好奇心が湧かなくなってしまう。

※フック力
 営業活動は5つのエレメント(要素)で構成されている。その最初のエレメントが〝フック〟だ。
相手に好奇心を沸かせ、「(この人は面白そう)」「(もう少し話を聞いてもいいなぁ)」などの動機付けを行うこと。
これができないと話が次に進まない。仮に、いかにも魅力的でトレンディーな商品をお持ちの企業ならフックという
エレメントは営業活動においては特に不要(売り物がすでにフックしているため)。
だがそうでない商材の場合には、営業担当や企業にはこの力が不可欠だ。
展示会での美人コンパニオンはまさにフック力アップの販促ツールと言える。
尚、その他のエレメントには〝ヒアリング〟〝プレゼ ンテーション〟〝クロージング〟〝フォロー〟と4つが続く。