(事例検証)『経営力再構築伴走支援』⑩ Vol.263

~負けない小規模事業者の進み方~

◆テーマ:〝家業存続か!?新家業への転換集中か!?〟

☆J社の場合
■業種    金属加工業
■従業員数  12人
■業務内容  産業用器具加工・電気製品部品製作

J社社長「法人営業に強い専門家と伺い〇□商工会議所にお願いしましたら山田先生を紹介され今日に至りました。金属加工業などかなり特殊なジャンルですが…。」

山田英司「はい。私は元々製造業専門で弊社のスタート時も富山の工場の法人営業指導がスタートでした。自慢になりますが同社の成功事例は実名入りで本になりました。」

J社社長「それは心強い。実はコロナ明けに専門家を紹介されお会いしたのですが、
『ホームページを変えましょう!』とか『グーグルに広告を出しましょう!』の一点張りで、正直当方の話は余り聞いて貰えずでして…。」

山田英司「本当ですか!?それはお困りでしたね。」

J社社長「私が伺いたかったのは、弊社の技術をよく理解して頂き、我々が考える強みではなく客観的な目線で見た当社の技術に対する率直な意見を伺いたかったんです。
ただ、そんなことがあり意気消沈してしまい本件はそのままになっていました。」

山田英司「そうだったのですね。」

J社社長「最近は廃業も多く、つい先日も同規模の事業者が倒産しました。弊社はコロナ融資を始め借金もありとても危機感を持っています。」

山田英司「承知しました。まずは工場を見学させて頂き、現場の方とも話をさせて下さい。その上で私の意見とJ社社長のご意見を刷り合わせし、合意形成が出来れば営業の方向性についても具体策を練りましょう!少し長時間になりますが、よろしくお願い致します。」

J社社長「はい。予定は開けておりますので大丈夫です。お昼もお弁当を用意しています。」

山田英司「それは恐縮です。ありがとうございます。」

◆現状

J社社長は50代。昭和40年代に創業した同社の2代目。
時代と共に加工技術も日進月歩と変化したが、常に設備投資を行い得意先から安定的に受注を獲得してきた。
しかし、東南アジア系の海外企業も最近は発展が目覚ましく、おまけに得意先も拠点を海外にするなど、
今後は益々競争が激しくなると思われる。昨年からご子息の後継者も社に入り
今後10年、20年先を見据えた事業の方向性を打ち出す必要がある。
そのような理由からコロナ後に技術的な指南以外では初の専門家派遣を依頼された。
しかし、守備行動派(多分だが)のせいか失礼ながら新しいことには及び腰のようで、
次のアクションまで時間が掛かってしまわれた。

問題点

  • J社社長は既存業務遂行には自信があられるようだが、現状変更や改革は苦手のご様子。
  • 技術面でのノウハウはかなりのものだが、これまでマーケティング活動は見当たらない。
  • じっくり吟味派であられるので、何に関しても簡単には飛びつかないご性格。ただ、今の ような局面では手探りでも動くことが重要。

◆J社の強み

  • 設備面や先端技術の導入には資金を惜しみなく投資され、素晴らしいモノがある。
  • 人格者であられ気遣いも素晴らしい。当然、得意先からの信頼も厚い。
  • 離職者も少なく、社はファミリー的な雰囲気。ノウハウの蓄積もある。

◆J社の弱み

  • 先行投資の革新設備による受注が軌道に乗らず減価償却が負担となっている。
  • 社長がトップセールスをしている関係で得意先から無理難題を言われてもつい断りにく く引き受けてしまい、ロスを招くことも少なくない。
  • 社員は同年代が多く、先代の際に若手だった人材が一気に高齢化している。

アドバイスポイントと解決の方向性

  • 社長や後継者には顧客以外との接点を作り、業界外の視野を広げて頂く。
  • 技術自体のアピールが重要。特に効果やメリットなどを顧客目線で分かりやすく明文化し、整理する。
  • 女性や再雇用技術者の採用など、まだ少し余裕のあるうちに今までやっていない採用作戦 にトライする。

専門家所感

社長ご自身について

危機感を持つことは大切なことだが、今すぐに経営が危ないということではなさそう。ただ、良い対策を計画的且つ着実に打っていかないと10年後は存続できないかも知れないということだ。トライ&エラーのプロセスは必ず必要。ラッキーは別として何事もすぐには成果に繋がらない。そのくせ危機は逆Jカーブで、ある日突然やってくる。その時になって慌ててももう遅いのだ。J社社長のようなご性格が一番危険なような気がする。

外部活用

50代ということで一般的に考えて多分外部活用には慣れていらっしゃらない。商工会議所の活用も補助金の相談くらいでご担当の名前すらご存じなかった様子。これからの小規模事業者の外部活用は必至だ。特に商工会議所の優秀なご担当、熱心な銀行担当、頼りになる保険会社の営業など、情報をたくさん持っている人との関係づくりが大切。

対策の道筋

業界内の情報だけでは、これからの競争時代はとても乗り切れない。外に目を向け、他業種の経営仲間の2人や3人は交流しておくべきであろう。
専門家との関係づくりも大切だ。但し、業界内の専門家やツール活用を振りかざすコンサルタントには注意が必要。
また一連の経緯を毎回違う相手に話しているようじゃあ時間が幾らあっても足りない。コレと思う相手を決めて自社理解を深めて頂こう。
一度会ってしまえば後はリモート面談でも事足りるケースが多い。J社社長の今後は戦略構築と検証を行いながら外部の専門家に伴走を依頼し、実践と検証を繰り返すことが大切だ。今回、2か月後に2度目の※専門家派遣事業の活用をお勧めしておいたが、残念ながら9か月経った今もまだご連絡はない。

※専門家派遣事業  
 中小機構や商工会議所などが予算を付けて実施するプロジェクト。回数制限や期間制限など様々な種類がある。
 但し、活用している小規模事業者は少ない。多分、事業者数が多すぎて自らが目立たないことや積極的に手を上げる人がいないか!?
 あるいは忙しくてそこまで気が回らないなどが理由のようだ。それに反して手を上げる事業者は失礼ながらバンバン積極的に諸制度を利用される。
 支援者からの提案には規模的な判断もある。多くは40人~50人以上の規模の会社だろう。支援内容も項目分けしやすく専門家の分業も組み立てやすい。
 ただ支援者が手を入れるべきは小さくて良い技術やノウハウを持っていて人知れず頑張っていらっしゃる事業者ではないだろうか!?
 支援自体は面倒なことが多く、手が掛かるのだが日本にはまだまだそんな会社が多く眠っていそうだ。