『家業・後継者・個人事業主への専門家派遣日記』⑤ Vol.282
~法人営業のDXはまず『Eメール営業』からスタート~
◆テーマ:※営業DX初動
□ケース5:お客様との出会いについて相談
昨年の商工会議所様主催の営業セミナーにご参加された有資格者(税理士)のC先生は新たに税理士事務所から独立される予定の方だった。交流会を始め、人と出会う機会があれば様々な場所に出て行かれる。先日も市が主催するイベントで知人より経営者を紹介された。少し雑談した際、後になって知人から意外な言葉を聞いた。「この前紹介した社長から『若い割には色のない先生だね』と言われたよ」と教えてもらった。ショックではあったが、以前からⅭ先生自身も気になっていたようだ。今回のことで初めてお会いする人に自分をどのようにアピールすれば良いかが分からないことに気づかれた。これまでは、他の先生の事務所傘下で敢えて自分をアピールする必要などなかったが、今後独り立ちするにあたってはそんなわけにはいかない。関与先も横滑りで、現在の事務所からそのまま数社は引き継げる予定だが、収入面を考えるともう少し増やしたい。独立までにまだ少し時間があるので、この際一度専門家に相談しておこうというのが主な趣旨である。
□C先生の一言:自分PRの勉強
「セミナーをお聞きして、自分の関与先との出会いについて考える機会が手に入りました。独立にあたり、先生業としてのPRについて少し勉強をしておきたいと思います。」
□企業背景:先生業としての1年後の独立準備
・業歴:3年間、税理士事務所で修行を兼ねて勤務。その後資格が十分となり独立予定。
・法人営業の経験はなく、大学のときに販売のアルバイトを経験した程度。
・相談経路:商工会議所主催セミナー受講後、当方のメール配信がキッカケで相談のお申し込み。
・現状課題:未知の営業という仕事について、独立前に少し勉強しておきたい。
◆Ⅽ先生のセールススタイル(以下S.S.と呼ぶ)
マネージャースタイル
守備理論派のスタイル。〝調整力・管理力〟に長け、温和なイメージ。自分の考えも論理的に説明ができ、状況が掴みやすい。但し、見たところ、診断結果に加え、初回面談など相手に興味を持ってもらう〝掴(つか)み〟のパワーはなさそうで、社長に「もう一度会ってもいいな」や「もう少し詳しく話を聞きたい」と言わせる力は弱そうだった。宿題や課題さえ手に入れば、分析や整理は得意そうなので、ここは安心。ただ、その機会を創り出す、手前のセールスは力不足だと思われる。
◆S.S.から判る事業推進上の強みor弱み
- (強み)ヒアリング力、温和でソフトなイメージ。
- (弱み)フック力(掴み)クロージング力(肩押し)。
情報収集力、整理力、分析に関しては抜群。但し、初回面談や新規客開拓に必要な入口のポテンシャルが弱い。交流会を始めとする新しい出会いの場面での自己紹介の雛形トークなどを作ることやプロフィールを作成し、名刺交換後に送るメール等でアピールするなどのルーティン活動への落とし込みが必要と思われる。一定のニーズを持つ相手には正確な情報収集による提案で効果を発揮する。
◆今回の課題解決の手順
- C先生自身のセールススタイルを整理・言語化。
- 「色がない」と言われた理由を一緒に分解&共有。
- 強み(安心感・専門性)を見える言葉に変換。
- 初対面で必ず伝える自己紹介フレーズを設計。
- 雑談→専門相談へ自然に移行する会話の流れを作成。
- 名刺交換後のフォローメール文面を用意。
- 出会いを単発で終わらせない仕組みをEメールで補完。
- 独立後を想定した行動シミュレーションを実施。
専門家所感
Ⅽ先生が行う課題解決の展開
C先生の課題は決して営業力の不足というものではなく、「自分という人間をどう覚えてもらうか」が未整理だった点にある。守備型・理論派が多い先生業(専門家)は、無理に売ろうとすると不自然になる恐れがある。大切なのは、前に出ることではなく、『自分の役割を明確にすること』。誰に対して、どんなノウハウや知恵を提供できるのかを自然な形で言えるように訓練しなければならない。その一点を言葉にできれば、出会いは自然に意味を持ち始める。
外部から見たキーストーン(要石)
今回の要石は、「色がない」という他者の一言を防御せず、学びとして受け取った姿勢にある。違和感を放置せず、独立前に相談したⅭ先生ご自身の判断は称賛されるべきものだろう。セールススタイルの診断も躊躇なく申し込まれたのは問題意識の高さの表れだと思われる。まずは自分自身の役割や得意分野の言語化がスタートラインであり、ここが解決すれば今後の出会いの質を大きく変える分岐点となるだろう。ただ、行動スタートが遅れがちになるのが要注意。「分かった」瞬間にアクションが遠のく癖には注意が必要。
社内体制のポイント
C先生はすべてを一人で抱え込まず、事務処理やフォローを奥様が補佐する体制を検討されている。家族を仕事に参加させるにはそれ相応のリスクもあるが、その結果、専門業務と関係づくりに集中できる環境づくりが手に入る。今後のDX初動(Eメール営業)を無理なく進める土台となる。
RACIモデル(役割整理)
責任者(A):C先生 実行担当(R):C先生 補佐(R補助):奥様(事務・フォロー) 助言者(C):専門家(外部)情報共有(I):未定
※個人事業主においては「外部をどう使うか」が最大の経営判断となる。
※閾値(いきち・あるいは、しきいち)
ある特性や行動が「強みとして機能する範囲」と、「弱みとして作用し始める境界線」のこと。「自分の強みを活かそう」とよく言うが、実は強みは使い方や度合いを誤ると、簡単に弱点へと転落する。Bさんも強みの使い方に課題があり、本人もそこに気づけず行動が止まってしまっていた。
【次号予告】― □手ごたえを感じるⅭ先生
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