『家業・後継者・個人事業主への専門家派遣日記』④ Vol.281
~法人営業のDXはまず『Eメール営業』からスタート~
◆テーマ:※営業DX初動
□ケース4:ブース出展型商談会直前のご相談
個人事業者のBさんは私が登壇した〝展示会対策の営業強化セミナー〟終了後、すぐに商工会議所のご担当を通じて、私への専門家相談を申し込まれた。まさに商談会数日前というタイミングでの直前のご依頼だったが、「どうしても相談&確認したいことがある」とのこと。間に入る商工会議所のご担当も状況を十分把握されていてスムーズなサポートだった。
□Bさんの一言:商談会の対策を
「セミナーをお聞きして、商談会に向けての対策を十分練ることの重要性を感じま した。まだ数日ありますのでできることは全部やりたいです」
□企業背景:典型的な受注産業
・業歴:数年、個人事業で展開。
・ブース出展型商談会の出展目的:100%ターゲットが来場。商談を実現したい。
・相談経路:商工会議所主催の当方のセミナーからそのまま専門家相談へ。
・現状課題:出展者全員が同業で競合。独自性を打ち出したい。
◆Bさんのセールススタイル(以下S.S.と呼ぶ)
フッカースタイル(あくまで想定)
積極的行動派のスタイル。〝フック力〟を感じ、魅力的な表現が上手。開拓や提案の入口で必要となるこの力は別名で〝掴(つか)み〟と呼んでいる。初めて出会う相手に対する関係づくりではかなり重要なファクター。まさに素晴らしい才能と言える。ただ、この強みも度を超すと弱みに転じてしまう。興味が分散しトークがバラつく。当然、戦術も分散してしまう。強く物事を推しすすめるという点では少々力不足。あと、発信力が強い反面、レスポンスは弱くなりやすいので、Eメールでのフォローは必須と言える。
◆S.S.から判る事業推進上の強みor弱み
- (強み)フック力(掴み)。
- (弱み)プレゼンテーション力(揺さぶり)、クロージング力(肩押し)、フォロー力(お伺い)。
新規開拓に必要な入口のポテンシャルは強い。相手に興味を持ってもらいやすく、提案機会を得ることができる。その機会を有効なものにするために、提案においては内容の絞り込みによる平準化・パターン化、面談時の漏れなどをフォローする形の商談後のフォローメールなどを徹底すると良い。新規開拓の入口は非常に強い。だからこそ、「提案内容の絞り込み」「パターン化」「商談後フォロー」を徹底すれば、成果に直結しやすい。
◆今回の課題解決の手順
- Bさんが持つセールススタイルの分析とご本人の理解、専門家との共有。
- 提案活動のパターンを決め込み、ふらつきを防ぐ点を強調。
- Bさんの得意分野や、狙いをヒアリング。
- 客観的且つ営業戦略的な見地から〝強み〟のセグメント&言語化、商品化。
- ファーストアプローチ、セカンドアプローチと商品群を整理。
- PRトークの作成。
- トークをカバーするためのツール案の組み立て。
- 実装のシミュレーション。
専門家所感
Bさんが行う課題解決の展開
Bさんの課題は能力不足ではなく、強みの使い方にあった。フック力が強く、初対面で相手の関心を引き出す力は十分。
しかし、その強みが整理されないまま発揮されることで、提案内容や訴求点が分散し、次に何をすべきかを自分で決めきれず、動きが止まってしまっていた。ここに、Bさんの行動を阻んでいた※閾値(いきち)があった。そこで本筋として取り組んだのは、「やることを増やす」ことではなく、「やらないことを決める」ことだった。提案テーマを一つに絞り、商談の流れを型として整え、商談後のフォローはEメールに委ねる。この3点を明確にしたことで、Bさんは現場で迷わず動けるようになり、 商談会という短時間の場でも自身の強みを最大限に活かせる状態を創り出せた。
外部から見たキーストーン(要石)
個人事業主はすべてを一人で判断しがちだが、その分、視点の偏りに気づきにくい。今回は商談会直前というタイミングで第三者が関わったことで、強みと弱みが整理され、判断の精度が一段引き上げられた。才能はあるのに、整理されない強みが判断を鈍らせ、行動を止めてしまう閾値に留まったままの個人事業者は少なくない。「外からの視点」を取り入れた決断が、成果を分ける要石と言える。
社内体制のポイント
Bさんの場合、社内体制とは自分自身の役割分担を指す。前に出て関係をつくる役割と、整理し継続させる仕組みを切り分け、フォローはEメールに任せた。人ではなく仕組みを補佐役に据えたことで、無理のないDXの初動が整った。
RACIモデル(役割整理)
責任者(A):Bさん、実行担当(R):Bさん、助言者(C):専門家(外部)、情報共有(I):商工会議所。
※個人事業主においては「外部をどう使うか」が最大の経営判断となる。
※閾値(いきち・あるいは、しきいち)
ある特性や行動が「強みとして機能する範囲」と、「弱みとして作用し始める境界線」のこと。「自分の強みを活かそう」とよく言うが、実は強みは使い方や度合いを誤ると、簡単に弱点へと転落する。Bさんも強みの使い方に課題があり、本人もそこに気づけず行動が止まってしまっていた。
【次号予告】― □失敗を糧に法人開拓に挑戦するC税理士先生
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