『家業・後継者・個人事業主への専門家派遣日記』⑩ Vol.275
~己を知り、営業戦略の第一歩としてステークホルダーを援軍化せよ!~
◆テーマ:〝※援軍づくり〟
☆V取締役部長の場合
■業種 アパレル業
■従業員数 19名
■業務内容 婦人服製造、小売り、EC通販
Ⅴ部長 「この度はリモートでの相談を受けて頂きありがとうございます。以前アパレルにお勤めの経験があったと伺ってⅩ社さんに紹介をお願いしました。
30分の相談、お手軽でいいですね。」
山田英司 「ありがとうございます。」
Ⅴ部長 「事前にメールでもやり取り頂き助かりました。例の、『体制一本化』に向けてのご意見ですが…。」
山田英司 「はい。Webを拝見しましたら目下製造卸しと、一般向けEC事業の2本立てで頑張っていらっしゃるご様子だったもので、両方を続けるのは無理があるように思いました。」
Ⅴ部長 「やはりそう思われますか!?実は元々は卸業のみだったのですが、10年前からネットでの販売を手掛けるようになり、
海外ブランドとの提携が功を奏し、一定の顧客を短期間で獲得できました。」
山田英司 「メールでは、同ブランドの力が少し陰ってきたことが原因で数字が落ちているとか。」
Ⅴ部長 「はい。何とか顧客との関係づくりや動画、SNS活用と踏ん張ってはいるのですが、さすがに人手も足らずでして。」
山田英司「分かります。動画制作など発信にはかなりの作業が必要になりますしね。」
Ⅴ部長 「はい。おまけに卸業は未だ担当が3名でフォローしている状態でして。」
◆現状
V部長は、元は商社にお勤めだったようで、数年前に同社に転職された。どうも後継者候補のようだ。
海外在住のご経験もありコネクションも色々お持ちのようだった。同社での仕事を経験され、意外だった面もあったのだろう。
何せアパレル業は作業が多く、細かい。特にメーカーとなると、企画、受注、生産、納品までの全部をこなす必要があり、毎日が戦争のような有様。
商社も大変だったろうが、きっと面食らわれたに違いない。通販は現社長の強力なパイプのお陰もあり、ブランド商材を引っ張ることができた。
そのため良いスタートを切ることができたが、ここ数年は鈍化気味。
本来なら通販体制を強化し、会員化や関係強化、情報発信の体制づくりなど徹底するべきだったのだが、卸業の方もそこそこ売上があるので、
ECのみに集中するわけにもいかずここまできてしまったご様子。
◆問題点
中小企業の中でも小企業の場合は、戦略立案面が難しい。まさに営業戦略が重要になってくる。
何をやめて何に集中するのか!?などだ。
判断が少しでも遅れると致命傷になりかねない。
最近は市場の変化も激しくなり、調子良くスタートできてもゆっくりできる期間は短くなる一方だからだ。おまけに同社の場合、二兎を追うものは一兎も得ず状態に差し掛かっているという可能性も考えられる。それは元々の卸業とEC事業の両方が売上減になっているからだ。まだ数年は大丈夫だろうが、このままではマズイ。
少しでも余力のある時に変革をすることが大切。卸業を担当されている3名は50代。創業からのメンバーだ。
仮にEC一本化の場合、転向は難しいだろう。このまま卸業の売上がゆっくり減っていって くれるなら良いのだが。
話を聞くとコロナ禍以降かなり落ち込みがあるようだ。
◆V部長のセールススタイル(以下S.S.と呼ぶ)
リーダースタイル(多分)。
攻撃理論派のスタイル。診断をしたわけではないが、イノベーションもあり、積極的な印象。
ここ数年の数字をご提示頂きながら説明される様子など理論派に違いないだろう。
それとは異なり現社長が守備型のようで逃避的な様子にV部長はご不満を漏らされていた。
一般の人より早計になりやすく、この場合、危機感というよりご自身が何かを変えたいという意識の方が強いのかも知れない。
1回の相談では限界があるので、宿題を出して半年後にもう一度相談をお受け頂くようにお誘いした。
◆S.S.から判る事業推進上の強みor弱み
- (強み)積極的な変革タイプ。事業の舵を切る際には最適なスタイルだ。人望もあり、ご紹介頂いたX社の担当もイチ押し。
統率力もあるので、年上の人でも上手にコントロールできそう。開拓業務では十分力を発揮できる。 - (弱み)保守的な業務は苦手で、時には改革志向が平和主義のメンバーからの反感を買ってしまう。
判断も少し早めで、一呼吸おいてから決断するのが良いのだが、どうしても早めの決定になってしまいタイミングがずれやすい。
◆強みを伸ばし、弱みを補う事業戦略
V部長は商社経験者なので情報収集はお手のもの。ブレインも多い。改革が決まれば、大いに力を発揮できるだろう。
問題はそのタイミング。早すぎてもマズいし、遅すぎても良くない。それに周囲を巻き込むことも重要だ。
特に守備型からの反感を買いやすいのでこの点を十分注意しながら進めなければならない。
まずはこの先5年から10年の事業予測を数字上で行うことが大切。財務系のコンサルタントに知り合いがいるそうなので、事情を話して予測を立ててもらうことをお勧めした。
次回はその結果を持ってもう一度アドバイスを受けて頂くことを提案した。
専門家所感
Ⅴ部長ご自身について
垢ぬけた感じの商社マンという印象。アパレル業にピッタリの雰囲気だ。転職事情は分からないが、まだまだ商社でも十分力を発揮できそうな印象。
海外ブランドなどとの提携などにも力を発揮できるという話であったが、今は顧客関係づくりの方に力を入れるのが先決だろう。
高額商品を買うような既存客がしっかりついているので、調査などもすると良さそう。
外に志向が向きがちなので、現状分析などについての活動が大切。
外部活用
SNS対策など内製化で賄っているが今後は外部受託をし、新たなノウハウなどを吸収する機会を作るのが得策。
Webを活用し、卸業もネットのみの形で展開すればロスも削減できる。
法人営業のネット版だ。
システム面や情報発信のノウハウは両方のモデルで活用でき効果的だろう。
対策の道筋
ECでの顧客が一定数確保できているのが大きな資産と言える。今後、より戦略的に展開することで収益増の可能性はあると思われる。
ブランド頼りにせず、顧客層の分析や購買動機の調査などを通じさらなる囲い込みができる。
そのためには現在のオフライン卸業は少しずつ縮小化をし、ネット受注に切り替えていくのが得策。
一時的に売上は減るだろうが、大幅なコストダウンも見込める上に、戦力も集中できる。

