『家業・後継者・個人事業主への専門家派遣日記』⑨ Vol.274

己を知り、営業戦略の第一歩としてステークホルダーを援軍化せよ!

◆テーマ:〝※援軍づくり〟

U副社長の場合

■業種    食品加工業

■従業員数  4名
■業務内容  総菜、食材卸し、和菓子販売、

U副社長 「今日は例の職域販売の件でご相談がありまして。」

山田英司 「承知しました。先般少し前に進みそうとおっしゃっていた件ですね。」

U副社長 「はい。実は担当の方に提案をお受け頂ければ●○の導入も検討してもよいというようなことを言ってしまいまして。」

山田英司 「なるほど、俗にいうバーター取引ですね。」

U副社長 「言ってしまってから少々まずかったかなぁと思い、後悔してしまっています。
●〇はリース契約ですから、毎月の支払は大したことはないのですが。」

山田英司 「なるほど。相手の方にちょっと期待を持たせ過ぎてしまったということでしょうか!?」

U副社長 「まっ、こちらの希望が叶えば、それもアリかな?と考えております。もし先生ならどうされますか?」

山田英司 「昔、私は経営が立ち行かなくなり、藁(わら)にもすがる思いで、恥ずかしながら色々な交換条件を使った営業を経験しました。
私の場合はもちろん、バーターで要らぬ商材を購入し、相手の雲隠れや、結局期待通りの成果が得られなかったり…。」

U副社長 「そうなんですか。」

◆現状

U副社長は新しい得意先を探されている。
特に近隣企業への職域販売という作戦で挑まれようとしていた。
実はこれは私がおすすめした。
一般の商業流通に乗せるには、同商材の賞味期限をはじめ、パッケージ開発などリスクが多いためだ。
直販だと一件一件、ユーザー宅に配達するのは負担が大きい。
となると選択肢は狭まってくる。そんな中で浮上したのが職域販売だ。
これなら企業に売り込むため、一定数の顧客がいると想定できる。
納品面でも比較的負担が少なく自社配送ができる範囲に限定できる。そこで、職域販売の 機会を獲得する法人営業の展開が必要になってくる。

問題点

バーター営業とは、昭和の好景気時代の背景を元に生まれた営業スタイル。ただし令和時代には向かない。
不安定な時代では、お互いの利害に対する期待値のすり合わせが難しく、どちらかが損をするケースがほとんどだ。
U副社長ご自身も数字が低迷する中で、焦りがあったのだろうと思う。
どうしても自身の置かれた状況が不安定な場合、つい甘い期待を描きがちだ。
営業経験が少ないと余計に落とし穴にはまりやすい。
私自身も営業マンだった頃に何度も似たようなことで失敗し、もうコリゴリと思ったが、いざ経営者になり、
危機が訪れると途端に同じ間違いをしてしまう。ただ、そんな時こそ、自分自身に立ち返り、
振り返りを行うことが大切。お取引があるということは、きっと強みや良い点がある はず。時には自分さえも気づいていないこともある。

U副社長セールススタイル(以下S.S.と呼ぶ)

フッカースタイル(当社診断結果)
攻撃行動派のスタイル。行動力があり、積極的。新規開拓営業には最も力を発揮できる。期待感を持たれ、周囲の方を巻き込むのも得意。
まさにハエトリガミ営業。ただし、継続力が弱く、諦めるのも早い。突っ込みが不足しがちでもう一押しができない。
調子が良い時は勢いに乗って進めるが、障害にぶつかるとパワー不足となる。
相手を絞り込み、十分にヒアリングを行った上で、相手の立場を見極め、細やかな提案を行うことが大切。この点を補強すればさらに力を発揮できる。

◆S.S.から判る事業推進上の強みor弱み

  • (強み)積極性があり、好感を持たれやすい。相手に期待を抱かせるのが得意なため、周囲の人が放っておかず、出会いが多い。
    好奇心も旺盛で、興味のアンテナも敏感。加えてアイデア力もあるため、新規開拓では十分実力を発揮できる。
  • (弱み)継続力が弱く、長続きしないのが難点。つい興味が広範囲に拡散してしまい、収拾がつかなくなることも少なくない。
    活動の絞り込みや顧客の選定において甘さが出やすい。

強みを伸ばし、弱みを補う事業戦略

U副社長は元々ものづくり事業者であり、営業活動の経験はない。特に法人営業となると全くイメージができないご様子。
ただ、小規模事業者のほとんどが一般的な法人営業の方法を知らない。
大抵は展示会やそのフォロー営業をはじめ、主催者のお膳立てによる商談会などを利用する。
自らターゲットを選定し、資料を作り、訪問しながら商談機会を作り、その先にプレゼンテーションをするという流れを理解している人は少ない。
今回はとにかく1件の成功パターンを経験することが重要。その1件が成功すれば再現性が確保でき、次の展開が可能になる。
その1件をできる限り正攻法で学び、負担を減らしつつも努力することで、強みを発揮し、弱みを補う形の展開が自然とできあがるだろう。

専門家所感

U副社長ご自身について

商材は優れたものを持っているU副社長。あとは商流の作り方さえ分かれば経営は安定化する。
再現可能な営業活動のパターンを見出すことが、今最も必要なことである。
様々な誘惑やお誘い、数字への不安など、後ろから追いかけてくるものがあるが、まずはこの活動に集中し、継続することが大切だ。

外部活用

外部活用は必須である。特に様々な障害が発生するため、いちいち自分ひとりで解決しようとしていては前に進めない。
状況分析を始め、突破方法の検討、今の進捗が全体のどの段階にあるのか等を把握することが重要。
外部の専門家をうまく活用しながら法人営業のノウ ハウを習得し、効率的に汗をかき、成功事例を1件獲得することが鍵となる。

対策の道筋

職域営業の方向性で進めると決めたら、これに邁進することがポイント。そのために必要な資料の準備や可能であればWebサイトも作成するのが得策。
法人担当者が仕入れ先を選定する際に最も気にするのはリスク面だからだ。社内では購買稟議書や仕入先承認申請書といった提出書類が必要になる。
既存の仕入れ先を押しのけ、新たな仕入れ先を選ぶ責任が担当者にのしかかるため、法人取引においては期待感で商機を獲得した後に、
さらに安心感も与えられるような体制を整えることが基本となる。

※フレーミング効果
 フレーミング効果とは、同じ情報でも伝え方によって人の意思決定や印象が変わるという心理現象。大きな支出に対して慎重になる一方で、小さな支出には寛容になりやすいことや、「この機会を逃せば損をする」と言われると、意思決定を急ぎがちになってしまう。具体的にはこのような現象を指す。