『家業・後継者・個人事業主への専門家派遣日記』③ Vol.268
~己を知り、営業戦略の第一歩としてステークホルダーを援軍化せよ!~
◆テーマ:〝※提案営業の基本(前編)〟
☆О取締役の場合
■業種 金属加工業
■従業員数 35名
■業務内容 旋盤や精密機械、板金加工
О取締役 「この度は宜しくお願い致します。ところで▽□銀行さんと先生のご関係は!?」
山田英司「実は行員向けの営業研修で数年にわたり講師をさせて頂きました。」
О取締役「そうでしたか。行員向けに…。」
山田英司「私が小さな会社の社長との付き合いが多いので、彼らとのコミュニケーション強化の一環で行員さん向けトレーニングをさせて頂いたのです。」
О取締役「社長攻略は大変ですしね。ところでウチも営業トレーニングをお願いします。」
山田英司「御社は金属加工業ですよね。図面読み取りや加工機の性能理解などの技術教育がメインでは!?それがまた何故?」
О取締役「もちろん技術教育は重要です。ただ、その技術を売りにして客先の受注を引き出したり、
新規案件を勝ち取るのは〝営業〟という仕事だと最近つくづく感じます。それも昔のように俺の背中を見ろでは駄目ですし…。」
山田英司「営業を専門的に学ばれる必要性を感じられたのですね。」
О取締役「はい。横展開や縦展開ができるように、できれば理論&実技でお願いします。」 山田英司「承知致しました。貴社の現場に合った提案営業のやり方指導ということですね。」
◆現状
50代のО取締役は生え抜きのものづくり一筋。業務管理はもちろん人事・総務的なことも統括されていて同社ではキーマン的存在。
業績は横ばいだが色々新しい芽もある。特殊技術を売りに新たな分野に進出したいというお考えはあるが、
営業部では既存客との取引管理が中心でまさに受注産業状態。
技術教育では部下に研修や見学会参加を促してきた。
ただ、これまでは技術力にさえ自信があれば仕事は自ずとついてくるというお考えだったが、
新たな人材採用や新市場開拓などを考えると技術PRだけではなく社のPRも重要で今のままでは駄目だと危機感を持たれた。
ご自身を筆頭に部下も※リスキリングが 必要と思われたようだ。
◆問題点
営業パーソンは客先への納品後フォローやラインで請けている仕事の検証などがメイン。
新たな提案もあるがあくまでお客様からのお問い合せありきのご対応が中心。
О取締役も自社の創意工夫でお客様の要望に応えることが提案と思っていたが、
同業の某社が新分野に切り込み新たな案件を獲得した話を聞き、仕事がまったく発生しないと思われるような
相手に積極的な提案を行い、ニーズを自力で生み出すことも重要であると今更ながら気づかれた。
しかし、自分自身も含め自社の営業にはそのような活動経験がなく、 日々の業務で手一杯でもある。
◆О取締役のセールススタイル(以下S.S.と呼ぶ)
マネージャースタイル(当社診断結果)
守備理論派の性格をベースとし、その特性に大きく影響を受ける。調整力があり面倒見も良い印象。
業務管理やマネジメントなど細かい指示の徹底や教育活動では大きな力が発揮できる。
但し先陣を切るリーダーシップなどの率先行動は苦手でつい後回しになる。
◆S.S.から判る事業推進上の強みor弱み
- (強み)既存業務の進捗管理等では大いに力を発揮できる。調整力がありバランス感覚に長けているので納期管理なども得意。対応力もあり、計画性も高い。
- (弱み)情報発信力が弱く、つい受け身になりがち。リスクを伴うようなことでも敢えて チャレンジをし、異分野との連携なども積極的に行うことが大切。
◆強みを伸ばし、弱みを補う事業戦略
長年のお付き合いである▽□銀行は的確な分析力を持った援軍と言える。
実は営業教育という従来の技術系教育とは異なる新たなスキルアップの必要性を提案されたからだ。
守備理論派のキーマンであるО取締役の場合、問題意識を持っても行動力は乏しいのが通例。
ただ良い援軍さえいれば良い情報を運んできてくれる。
特に営業活動には※再現性や※平準化が求められる。
継続的展開が可能で個々のスキルに関係なく成果が上がる手法 が必要だ。
スーパー営業など当てにできないので、誰もが取り組める手法が必要だからだ。
専門家所感
О取締役ご自身について
的確な管理力と面倒見の良いご性格のО取締役のお陰で、同社は安定的に業務をこなせてきたと言える。
ただ、先般の展示会出展など、失礼ながら戦略やツールメッセージにおいて独自性が伴わず、
コストを掛けた割には余り良い結果とは言えなかった。
今回の営業教育で の講師招聘はご自身も営業について学ぼうというご姿勢の表れではないかと思われる。
外部活用
余力のない小企業の場合、新市場探求すなわちマーケティング活動に人員や時間は割けない。
特にモノづくり企業の場合、設備能力も考える必要があり制約下の開拓となる。
そのため確実な方法で展開する必要がある。かつて20年ほど前にはファックスを使って開拓を行った事例もあった。
今はITを活用し、省力化で行うには外部ノウハウは不可欠と言える。
対策の道筋
現場教育ではまず日常活動の見直しがスタートだろう。
仕様や設計図面の読み取り時、加工技術の確認や見直しなど業務内でも新たな提案を行う余地がふんだんにあるハズ。
「(多分、●□様では受け容れることはないだろう…。)」などの経験から生まれる既成概念や、
発信力 が弱い守備型適性でつい抜けがちな提案活動の見直しが着手点になるような気がする。
※リスキリング
時代が急速に変化する中で、企業はそれに追いつけ追い越せと様々な業態革新や技術革新を余儀なくされている。
もちろんそこで働く従業員も同様に新たな知識や技能を身につける必要性があり、企業側が行う再教育対策を指す。
ただ、小規模企業や中堅以下の企業では中高年がメイン戦力となるため、これらの意識改革は極めて難易度が高い。
※再現性
同じ条件下では一定の活動に対し、常に近しい結果が生まれるということ。営業活動の場合、
個人的なスキルに頼るような属人的手法だと、成果も偏ってしまう。
そうなると営業センスやコミュニケーションスキルの高い人材でないと戦力にならない。
人材不足に益々拍車が掛かる昨今では営業のルール作りにおいて再現性の欠如は禁じ手と言える。
※平準化
先の再現性を確保するには、いかなる人材も一定の水準に引き上げることが可能な段階的な活動体系が不可欠でこれを平準化と呼ぶ。
それはまさにスキルアップの階段と言える。営業を単なる感性で考えず理論的に考え、行動分解し、
一つ一つをマスターすれば一定の水準になるように体系化することが重要 である。

